長男が実家を独り占め? 兄弟3人の相続がこじれた理由

※本記事は、相続で起こりやすいトラブルを分かりやすく解説するための架空事例です。実在の人物・団体・事案とは関係ありません。

「実家は俺が相続する。それが自然だろう」

父・健一さん(享年78歳)が亡くなって間もなく、長男の太郎さん(52歳)はそう言い切りました。しかし次男の次郎さん(49歳)と三男の三郎さん(46歳)は、当然のことながら納得できません。3人の間に流れる空気は、日に日に険しくなっていきました。

なぜトラブルになったのか

健一さんの遺産は、土地と建物(評価額2,400万円)の実家と、預貯金500万円の合計約2,900万円でした。太郎さんは「20年以上親と同居して面倒を見てきた。自分が実家を相続するのは当たり前だ」と主張。しかし遺言書はなく、法定相続分は3人均等(各3分の1)です。

次郎・三郎両氏としては「不動産をもらっても困る。現金で精算してほしい」という立場。話し合いは平行線をたどり、2年近く遺産分割協議がまとまりませんでした。

何が問題だったのか

① 遺言書がなかった

健一さんが「太郎に実家を渡す」という遺言を残していれば、これほど揉めることはありませんでした。遺言がない場合、財産の分け方は相続人全員の合意が必要です。たとえ同居していた長男であっても、他の相続人を無視して相続することはできません。

② 「寄与分」の主張が感情的になった

民法には「寄与分」という制度があり、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人は、法定相続分より多く受け取れる可能性があります。しかし太郎さんの「同居・介護」が寄与分として認められるには、具体的な証拠(介護日誌、支出記録など)が必要で、単に「一緒に住んでいた」だけでは認定が難しいケースも多いです。

③ 不動産の分割方法を知らなかった

不動産は現金と違い、そのままでは3等分できません。主な方法には以下があります。

  • 現物分割:一人が不動産を取得し、他の相続人に現金(代償金)を支払う「代償分割」
  • 換価分割:不動産を売却して現金を分ける
  • 共有:全員で共有名義にする(後トラブルになりやすい)

太郎さんは代償金を用意できず、換価分割(売却)も嫌がったため、話し合いが止まってしまいました。

実務上どう考えるべきか

このようなケースでは、まず「誰が何を望んでいるか」を整理することが重要です。太郎さんが実家に住み続けたいなら、金融機関への相談を含め代償金の工面を検討すべきでした。また、早い段階で弁護士や司法書士など第三者に入ってもらうことで、感情的な対立を避けながら合理的な解決策を模索できます。

事前にできる対策

  • 親が元気なうちに、財産の分け方について家族で話し合う
  • 公正証書遺言を作成し、誰に何を渡すかを明確にしておく
  • 不動産を相続する人が代償金を準備できるよう、生命保険などを活用する
  • 寄与分を主張したい場合は、介護の記録や支出の領収書を残しておく

まとめ

「長男が家を継ぐ」という慣習と、法律上の「均等な相続権」は別物です。感情論だけで話し合いを進めると、時間だけが過ぎ、兄弟関係も傷ついてしまいます。遺産分割は、早期に専門家を交えた話し合いを行うことが、家族全員にとっての最善策です。

相続・事業承継・不動産でお悩みの方へ

実務経験に基づいて、最適な解決策をご提案します。

▶ 無料相談はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です